2017年2月5日日曜日

古語辞典を買う(1)

中学生が古語辞典を必要になったので、どれが良いか少し調べてみました。

手元にあったのは、自分が学生時代に使っていた旺文社古語辞典新版と、たまたま古本屋で見かけて買った三省堂全訳読解古語辞典第三版。さらにiPhoneアプリの旺文社全訳古語辞典第四版、大修館全訳古語辞典のトータル4冊(※1)。

旺文社の方は、普通の国語辞書と同じ形式で、見出し語の下に品詞や語釈が載っています。いかにも辞書という体裁ですが、ビジュアル面でかなり見やすくなった最近の教科書に慣れている身からすると、少々見づらいとのこと。色も黒一色で地味でした。
旺文社古語辞典新版の「あはれ」のページ。

三省堂の方は2007年に刊行されたこともあり、随分と見やすくなっています。本文は二色刷りになり、重要語には語釈の前に「語義の要約」が載っていて、直感的に意味を把握するのに便利です。語釈も大きな意味の固まりごとに改行されています。

三省堂全訳読解国語辞典第3版の「あはれ」。二色刷りで見やすい。

iPhoneアプリを見てみると、大修館の方は、旺文社古語辞典と同様のシンプルな構成。語釈より先に例文が表示されるのはちょっと気になります。ただし「全訳」とあるとおり、例文には現代語訳が付いているので、初学者には親切です(※2)。

大修館全訳古語辞典。いきなり用例が登場します。

そして旺文社の全訳古語辞典。これがビックリするほど見やすくて使いやすい。見出し語のゴシック体と語釈の明朝体とのバランスが良く、重要語の赤文字も控えめで(二色刷りの辞書のなかには真っ赤っ赤のものもありました)とても読みやすいです。

旺文社全訳古語辞典iPhone版。とても見やすい。

重要語の場合、見出し語の次にある「語義パネル」でその単語のおおよその意味(語感)が分かります。勿論例文には現代語訳がついています。電子辞書だから当たり前なのですが「あはれ」と「をかし」といった類義語の比較でも、それぞれの語に即座に遷移でき理解を助けます。レスポンスも早く、操作をしていて楽しい。iPad版は画面が広い分さらに快適に使用できます。これは完全に紙の辞書を超えた、と実感したアプリでした。

旺文社全訳古語辞典のiPad版。さらに見やすい。

もうこれでいいじゃん、と思ったのですが、残念ながら中学校では電子辞書やスマホ・タブレットの使用は禁止。なのでやっぱり紙の辞書が必要です。

手持ちの紙の辞書の中では、三省堂の全訳読解古語辞典のページ作りがiPhoneアプリの旺文社全訳古語辞典に近く、これでいいかな、とも思ったのですが、「辞書は最新版を買うべし」という先人たちの教えに従い、最新版の古語辞典から選ぶことにしました。

まずは対象となる古語辞典の選出。古語辞典なんてそんなに大した数は出ていないだろうと高をくくっていたのですが、調べてみてビックリ、現行の小型辞書に絞ってもこんなにありました(※3)。

岩波古語辞典 補訂版 大野晋・佐竹昭広・前田金五郎編 1990.2
旺文社古語辞典 第十版増補版 松村明・山口明穂・和田利政編 2015.10
旺文社全訳古語辞典 第四版 宮腰賢・石井正己・小田勝編 2011.10
旺文社全訳学習古語辞典 宮腰賢・石井正己・小田勝編 2006.10
学研学習用例古語辞典 改訂第三版 金田一春彦監修 2014.11
学研全訳古語辞典 改訂第二版 金田一春彦監修・小久保崇明編 2014.2
角川最新古語辞典 増補版 山田俊雄編 1980.1
角川新版古語辞典 新装版 久松潜一・佐藤謙三編著 1989.12
角川必携古語辞典 全訳版 吉川泰雄・山田俊雄・室伏信助編 1997.11
角川全訳古語辞典 室伏信助・久保田淳編 2002.1
三省堂新明解古語辞典 第三版 金田一京助監修・金田一春彦編 1995.1
三省堂 詳説古語辞典 秋山虔・渡辺実編 2000.1
三省堂全訳読解古語辞典 第4版 鈴木一雄・外山映次・伊藤博・小池清治編 2013.1
三省堂全訳基本古語辞典 第3版増補新装版 鈴木一雄編 2007.12
小学館全文全訳古語辞典 北原保雄編  2004.1
小学館 全訳古語例解辞典 第三版 北原保雄編 1997.10
大修館 古語林 林巨樹・安藤千鶴子編 1998.3
大修館全訳古語辞典 林巨樹・安藤千鶴子編 2001.11
大修館 新全訳古語辞典 林巨樹・安藤千鶴子編 2017.1
ベネッセ古語辞典 井上宗雄・中村幸弘編 1997.10
ベネッセ全訳古語辞典 改訂版 中村幸弘編 2007.11
ベネッセ全訳コンパクト古語辞典 中村幸弘編 1999.12
明治書院 最新詳解古語辞典 佐藤定義編 1991.10
文英堂 全訳全解古語辞典  山口堯二・鈴木日出男編 2004.10
東京書籍 最新全訳古語辞典 三角洋一・小町谷照彦/編集委員 2005.11


こんなにあってはとても全部を見てから選ぶという訳にはいきません。それに、辞書にはそれぞれ特色や強みがあるので、それを一つ一つ把握して、それぞれを比較して……などということをしていては、いつまで経っても買えません。

そこで、今回古語辞典を選ぶに当たっては、以下の3点に絞って検討することにしました。

(1) 例文に現代語訳がある
 実際に使うのは中学生なので、分かりやすいのが第一。現代語訳はあるに越したことはありません。
(2) 語義の概要が載っている
 複数の語義がある単語を調べる場合、いきなり細々した語釈が並べられているよりも、最初にその言葉の語感が載っていれば、「要するにどういう意味か」が押さえられるので、実際に辞書なしで古文を読むときに役立つと感じました。
(3) 語釈の意味ごとに改行されている
 理由は単純。その方が見やすいから。最近の辞書は以前に比べれば二色刷りも増えて大分見やすくなりましたが、改行がない辞書はやっぱり見にくいです。現代語の国語辞書に比べ、収録語数が大分少ないのですから、国語辞書よりも多少はビジュアルに工夫してもらいたいところです(※4)。

何のことはない、iPhoneアプリの旺文社全訳古語辞典の特長そのまんまでした。

その他の項目は今回は一切無視しました。凡例もほとんど見ていませんし、語釈の比較もしていません。付録が充実しているとか、巻頭にカラーページを載せているとか、用例を採取した古典作品の種類だとか、各辞書で様々な工夫をされていると思うのですが、全て無視。あくまで本文ページが見やすいかどうかだけで決めています(済みません)。

という訳で、新刊書店でたまたま見つけた古語辞典を、この3点(のみ)で比較した結果、2冊の古語辞典を購入しました(学校用と家庭用)。さて、その2冊の古語辞典とは……?



(※1) 電子辞書のアプリも1冊、2冊と数えるのでしょうか。それともソフトウェアのように1本、2本?

(※2) 旺文社全訳古語辞典の初版が刊行されたのは1990年。21世紀には「全訳」が学習用古語辞典の主流になっていたらしい。

(※3)Wikipedia「古語辞典」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E8%AA%9E%E8%BE%9E%E5%85%B8)の情報をもとに作成。漏れなど色々あると思いますがご容赦を。

(※4)紙の辞書の多くの欠点の一つが読みにくいこと。限られたスペースである程度の内容を詰め込むので、どうしても字が小さくなり余白も少ない。私のような中年は勿論、最近の中学生はビジュアル重視の見やすい教科書に慣れているので、字がゴチャッと詰まった辞書は読みにくいらしい。

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