2017年2月5日日曜日

古語辞典を買う(2)

さて、中学生用の古語辞典を購入するにあたり、

(1) 例文に現代語訳がある
(2) 語義の概要が載っている
(3) 語釈の意味ごとに改行されている

の3点のみに着目して、新刊書店で見かけた古語辞典を比較した結果、購入したのは、『三省堂 全訳読解古語辞典 第四版』でした。
三省堂の公式サイトで本文見本を見ることができます。
http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/dicts/ja/dokkaiKogo4/subPage01.html

そもそも第三版の時点で上記3点は全て満たしていたのですが、見出し語や強調語にゴシック体を使ったことで、さらに見やすくなった印象です。第三版を買っていたこともあり、そのうち第三版と第四版との比較をしてみたい、という思いもありました。

もう1冊は、『ベネッセ全訳古語辞典』。基本的な構成は『三省堂全訳読解古語辞典』と同じ。学校の授業でよく出てくる重要語・最重要語の解説が充実しています。ゴシック体と明朝体のバランス、赤文字の量もそれほど多くなく、見やすい構成でした。こちらもホームページに本文見本が載っています。
http://www.teacher.ne.jp/jiten/jiten/kou4.html


本命だった旺文社全訳古語辞典は、紙の方はちょっとピンと来ませんでした。見出し語が明朝体で、語義パネルもiPhone版/iPad版の方が見やすい印象。iPhone版があるから紙の方はいいか、という気持ちにもなり、今回は購入するに至りませんでした。
本文見本はこちら。
https://www.obunsha.co.jp/tokuten/zenyaku/tokucho.html



さて、めでたく古語辞典を買えたので、話としてはこれで終わりなのですが、折角古語辞典を比較して決めたのだから、比較結果をまとめておきたくなりました。出版社による本文見本などの情報と、実物の本文画像を以下に掲載しています。


(1) 岩波古語辞典 補訂版 大野晋・佐竹昭広・前田金五郎編 1990.2
 https://www.iwanami.co.jp/book/b256590.html
 岩波がホームページに本文見本などを載せる訳がない(笑)。本文はこんな感じです。
岩波古語辞典の「あはれ」

 小さな文字がビッシリと並んでいます。色は黒一色。語釈の意味ごとの改行もありません。例文の現代語訳など一切なし。流石岩波、硬派です。でも正直読みにくい。初めての古語辞典にするにはかなりつらいです。


(2) 旺文社古語辞典 第十版増補版 松村明・山口明穂・和田利政編 2015.10
 本文見本はこちら。
 https://www.obunsha.co.jp/pr/oukogo/
 私が持っている新版と比べ、本文のデザインが随分進歩した印象です。
旺文社古語辞典の「あはれ」

 二色刷りになり、「語感」として語義の概要も載るようになりました。意味ごとの改行もされています。ただフォントは明朝体のみ。例文も全訳ではありません。


(3) 旺文社全訳古語辞典 第四版 宮腰賢・石井正己・小田勝編 2011.10
 旺文社のサイトは上記参照。実際の本文はこんな感じです。
旺文社全訳古語辞典の「あはれ」

 「語義パネル」「類語パネル」は初学者には親切で分かりやすいと思います。


(4) 旺文社全訳学習古語辞典 宮腰賢・石井正己・小田勝編 2006.10
 https://www.obunsha.co.jp/service/jisyo/tokucho2.html
 ピンクが強すぎてちょっとどぎつい。初学者を意識しているのは分かりますが、色々な工夫が却って見づらく感じました。実物は未確認。


(5) 学研学習用例古語辞典 改訂第三版 金田一春彦監修 2014.11
 学研のサイトはこちらですが、あまり詳しい内容は載っていません。
 http://hon.gakken.jp/book/1230413400
学研学習用例古語辞典の「あはれ」

 画像はモノクロですが、実際には二色刷りです。初学者用に「意味ウインドー」や「学習ポイント」を用意しているのは良いのですが、カラーで見ると少々見にくい感じがしました。


(6) 学研全訳古語辞典 改訂第二版 金田一春彦監修・小久保崇明編 2014.2
 こちらも学研のサイトでは詳しくは分かりません。
 http://hon.gakken.jp/book/1230388600
学研全訳古語辞典の「あはれ」

 ちょっと赤がくどい。「語義の扉」「学習ポイント」など、初学者向けの情報が載っており、内容は良いと思うのですが、もう少し赤を減らしたほうが見やすくなるんじゃないかと思います。


(7) 角川最新古語辞典 増補版 山田俊雄編 1980.1
 角川のサイトも本文見本がなく、詳しい内容は分かりません。少々不親切。また、角川のオンラインショップ(カドカワストア)では在庫なしとありますが、Amazonでは注文できるようです。古語辞典に限らず、角川の辞書はどれが生きていてどれが絶版なのかよく分かりません。
 http://www.kadokawa.co.jp/product/199999011202/
角川最新古語辞典の「あはれ」(1)

 単色で文字がビッシリ、改行なし。岩波古語辞典なみのストイックさです。見出し語が大きい分、岩波古語辞典より多少は読みやすい程度。「最新」とは言いつつも、40年近く前の辞書ですからやむを得ないところでしょうか。


(8) 角川新版古語辞典 新装版 久松潜一・佐藤謙三編著 1989.12
 (7)と同様、カドカワストアは在庫なしですが、Amazonでは購入可能です。実物未確認のため評価不能。
 http://www.kadokawa.co.jp/product/199999010404/


(9) 角川必携古語辞典 全訳版 吉川泰雄・山田俊雄・室伏信助編 1997.11
 これはちゃんとカドカワストアに在庫がありました。実物未確認です。
 http://www.kadokawa.co.jp/product/199999013400/


(10) 角川全訳古語辞典 室伏信助・久保田淳編 2002.1
 こちらも在庫あり。実物も確認できました。
 http://www.kadokawa.co.jp/product/200000000451/
角川全訳古語辞典の「あはれ」(1)

角川全訳古語辞典の「あはれ」(2)

 角川最新古語辞典と比べると随分見やすくなりました。初学者向けに「語誌・語感」欄で意味の概要を説明していて、語釈も意味ごとに改行しています。吃驚したのが用例の長さ。トータル2段分以上使って『竹取物語』の原文と現代語訳、そして用例に出てきた重要語の解説を載せています。もはや「あはれ」の説明ではなくなっています。


(11) 三省堂新明解古語辞典 第三版 金田一京助監修・金田一春彦編 1995.1
 三省堂のサイトの「見本ページ」をクリックすると本文の見本が開きます。
 http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/dicts/ja/newm_ac/index.html
新明解古語辞典の「あはれ」

 画像はモノクロですが、実物は二色刷りです。見やすいレイアウトではあるものの、語義の概要はありません。「新明解」ブランドだからといって、新明解国語辞典との共通性は特にないようです(じゃあ何で同じブランド名にするんだ、って話ですが)。

    
(12) 三省堂 詳説古語辞典 秋山虔・渡辺実編 2000.1
 三省堂のサイトの「見本ページ」をクリックすると本文の見本が開きます。フォントの使い方とか微妙な二色刷りとか何となくデザインの古さを感じます。
 http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/dicts/ja/san_acdt/index.html
 
三省堂 詳説古語辞典の「あはれ」

 「あはれ」の説明では「アプローチ」欄で語義の概要を、「古語深耕」欄で「あはれ」と「をかし」の違いを説明するなど、初学者向けの工夫をしていますが、やっぱりどこか古くさい感じが否めません。20年近く前の辞書ですから仕方ないですが。 


(13) 三省堂全訳読解古語辞典 第四版 鈴木一雄・外山映次・伊藤博・小池清治編 2013.1
 三省堂のサイトは上記参照。実物の本文はこんな感じです。
三省堂全訳読解古語辞典の「あはれ」(1)
三省堂全訳読解古語辞典の「あはれ」(2)

 第三版と比較すると、見出し語がゴシックになり、視認性がよくなりました。「語義語釈」も見やすくなっていて、さらに「チャート」欄で語感をより深く掘り下げています。「あはれ」と「をかし」の違いにも十分な説明を載せており、初学者には至れり尽くせりの内容です。


(14) 三省堂全訳基本古語辞典 第三版増補新装版 鈴木一雄編 2007.12
 サイトには紹介ページはあるものの見本はありませんでした。実物未確認。
 http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/dicts/ja/kihonKogo_new/index.html


(15) 小学館全文全訳古語辞典 北原保雄編  2004.1
 小学館のサイトも本文見本はありません。
 https://www.shogakukan.co.jp/books/09501554
小学館全文全訳古語辞典の「あはれ」(1)
小学館全文全訳古語辞典の「あはれ」(2)

 評判の高い古語辞典だけあって、語釈の前に語義の概要が載っていて、「あはれ」と「をかし」の違いもキチンと説明しています。意味ごと改行していて、赤文字もそれほど多くなく見やすい印象です。ただ、三省堂全訳読解古語辞典と比べると少々あっさりしています。


(16) 小学館 全訳古語例解辞典 第三版 北原保雄編 1997.10
 小学館のサイトには、この第三版(https://www.shogakukan.co.jp/books/09501553)とコンパクト版(https://www.shogakukan.co.jp/books/09501563)の2種類が載っていますが、Amazonに新刊があるのは第三版のほうだけでした。
 「Web日本語」にコンパクト版の本文見本が載っています。実物は未確認です。
 http://www.web-nihongo.com/wn/dictionary/dic_18/d-index.html


(17) 大修館 古語林 林巨樹・安藤千鶴子編 1998.3
 大修館のサイトも本文見本はありません。
 http://www.taishukan.co.jp/book/b197535.html


 大修館の古語辞典の特徴でしょうか、語釈より前に用例(とその訳)が載っています。用例はできれば語釈の後の方がよいと思います。
 全訳でもないですし、中学生用には不向きと判断しましたが、古本屋で大修館80周年記念出版の非売品(天金・パラフィン付き)を見つけたので、思わず自分用に買ってしまいました。


(18) 大修館全訳古語辞典 林巨樹・安藤千鶴子編 2001.11
 「古語辞典を買う(1)」参照。Amazonではまだ新刊がありますが、次の『新全訳古語辞典』に切り替えたようです。大修館のサイトには未掲載。実物も未確認。


(19) 大修館 新全訳古語辞典 林巨樹・安藤千鶴子編 2017.1
 今年の1月に出たばかりとあってか、気合いの入った特集ページができていました。
大修館 新全訳古語辞典の「あはれ」

 「これで覚える!」や「まとめて覚える!」欄からも初学者をターゲットにしていることが窺えます。「ポイント」で「あはれ」の意味の推移や「をかし」との違いも解説していて内容も充実していますが、色々詰め込みすぎてちょっと見づらいという印象でした。


(20) ベネッセ古語辞典 井上宗雄・中村幸弘編 1997.10
 ホームページには詳しい内容は載っていません。今のベネッセの一押しは、全訳古語辞典の方なんでしょう。
 http://www.teacher.ne.jp/jiten/jiten/kou3.html


 本文は昔ながらのシンプルなレイアウトです。


(21) ベネッセ全訳古語辞典 改訂版 中村幸弘編 2007.11
 上記参照。実物は以下のとおり。
ベネッセ全訳古語辞典の「あはれ」

 「あはれなり」を最重要語として特別扱いしています。語義の概要、語の歴史、「をかし」との比較もあります。赤字もそれほど煩くなく、初学者向けには見やすい印象でした。


(22) ベネッセ全訳コンパクト古語辞典 中村幸弘編 1999.12
 実物は確認できませんでした。ベネッセのサイトの見本を見る限り、全訳古語辞典をさらにかみ砕いた内容のようです。単語数も少なく、中学生をターゲットにしているようなのですが、如何せん古い辞書なので、同じベネッセなら全訳古語辞典の方が良いと感じました。
 http://www.teacher.ne.jp/jiten/jiten/kou8.html


(23) 明治書院 最新詳解古語辞典 佐藤定義編 1991.10
 ネットで調べていて知りました。明治書院のサイトでは詳しいことが分からず、実物未確認なので何ともいえません。「最新」といいながら1991年発行なのも何ともいえません。
 http://www.meijishoin.co.jp/book/b98768.html


(24) 文英堂 全訳全解古語辞典  山口堯二・鈴木日出男編 2004.10
 文英堂のサイトでは詳しいことが分かりません。
 http://bun-eido.co.jp/products/?menu=4&submenu=0&code=09712
文英堂 全訳読解古語辞典の「あはれ」

 一応実物は確認できました(画像はモノクロですが、実物は二色刷りです)。オーソドックスなつくりの辞書だと思います。実は「現代語訳」「語義の概要」「意味ごとの改行」の3点を満たしているのですが、存在の地味さに食指が動きませんでした。


(25) 東京書籍 最新全訳古語辞典 三角洋一・小町谷照彦/編集委員 2005.11
 教科書で有名な東京書籍。画像はありませんが実物は確認しています。買うかどうか正直迷いました。サイトにもあるように、上下二段組みの対訳方式(上の段に古文の原文、下の段に現代語訳)は面白い試みだと思うのですが、字が小さいのでちょっと見にくい印象でした。
 http://www.tokyo-shoseki.co.jp/books/39590/


しかし古語辞典がこんなに沢山出ているとは思いませんでした。しかも複数の古語辞典を出版している会社も結構あります(三省堂、角川は4種類、旺文社、ベネッセは3種類)。しかも古語辞典それぞれの特長がよく分からない。キチンと古語辞典を比べて買うためにも、自社サイトには是非とも本文見本を載せてもらいたいと思います。また、「サイトには載っているけど品切れ」逆に「サイトには載ってないけどまだAmazonで新刊で買える」みたいな齟齬はなくした方がよいと思います。

古語辞典を買う(1)

中学生が古語辞典を必要になったので、どれが良いか少し調べてみました。

手元にあったのは、自分が学生時代に使っていた旺文社古語辞典新版と、たまたま古本屋で見かけて買った三省堂全訳読解古語辞典第三版。さらにiPhoneアプリの旺文社全訳古語辞典第四版、大修館全訳古語辞典のトータル4冊(※1)。

旺文社の方は、普通の国語辞書と同じ形式で、見出し語の下に品詞や語釈が載っています。いかにも辞書という体裁ですが、ビジュアル面でかなり見やすくなった最近の教科書に慣れている身からすると、少々見づらいとのこと。色も黒一色で地味でした。
旺文社古語辞典新版の「あはれ」のページ。

三省堂の方は2007年に刊行されたこともあり、随分と見やすくなっています。本文は二色刷りになり、重要語には語釈の前に「語義の要約」が載っていて、直感的に意味を把握するのに便利です。語釈も大きな意味の固まりごとに改行されています。

三省堂全訳読解国語辞典第3版の「あはれ」。二色刷りで見やすい。

iPhoneアプリを見てみると、大修館の方は、旺文社古語辞典と同様のシンプルな構成。語釈より先に例文が表示されるのはちょっと気になります。ただし「全訳」とあるとおり、例文には現代語訳が付いているので、初学者には親切です(※2)。

大修館全訳古語辞典。いきなり用例が登場します。

そして旺文社の全訳古語辞典。これがビックリするほど見やすくて使いやすい。見出し語のゴシック体と語釈の明朝体とのバランスが良く、重要語の赤文字も控えめで(二色刷りの辞書のなかには真っ赤っ赤のものもありました)とても読みやすいです。

旺文社全訳古語辞典iPhone版。とても見やすい。

重要語の場合、見出し語の次にある「語義パネル」でその単語のおおよその意味(語感)が分かります。勿論例文には現代語訳がついています。電子辞書だから当たり前なのですが「あはれ」と「をかし」といった類義語の比較でも、それぞれの語に即座に遷移でき理解を助けます。レスポンスも早く、操作をしていて楽しい。iPad版は画面が広い分さらに快適に使用できます。これは完全に紙の辞書を超えた、と実感したアプリでした。

旺文社全訳古語辞典のiPad版。さらに見やすい。

もうこれでいいじゃん、と思ったのですが、残念ながら中学校では電子辞書やスマホ・タブレットの使用は禁止。なのでやっぱり紙の辞書が必要です。

手持ちの紙の辞書の中では、三省堂の全訳読解古語辞典のページ作りがiPhoneアプリの旺文社全訳古語辞典に近く、これでいいかな、とも思ったのですが、「辞書は最新版を買うべし」という先人たちの教えに従い、最新版の古語辞典から選ぶことにしました。

まずは対象となる古語辞典の選出。古語辞典なんてそんなに大した数は出ていないだろうと高をくくっていたのですが、調べてみてビックリ、現行の小型辞書に絞ってもこんなにありました(※3)。

岩波古語辞典 補訂版 大野晋・佐竹昭広・前田金五郎編 1990.2
旺文社古語辞典 第十版増補版 松村明・山口明穂・和田利政編 2015.10
旺文社全訳古語辞典 第四版 宮腰賢・石井正己・小田勝編 2011.10
旺文社全訳学習古語辞典 宮腰賢・石井正己・小田勝編 2006.10
学研学習用例古語辞典 改訂第三版 金田一春彦監修 2014.11
学研全訳古語辞典 改訂第二版 金田一春彦監修・小久保崇明編 2014.2
角川最新古語辞典 増補版 山田俊雄編 1980.1
角川新版古語辞典 新装版 久松潜一・佐藤謙三編著 1989.12
角川必携古語辞典 全訳版 吉川泰雄・山田俊雄・室伏信助編 1997.11
角川全訳古語辞典 室伏信助・久保田淳編 2002.1
三省堂新明解古語辞典 第三版 金田一京助監修・金田一春彦編 1995.1
三省堂 詳説古語辞典 秋山虔・渡辺実編 2000.1
三省堂全訳読解古語辞典 第4版 鈴木一雄・外山映次・伊藤博・小池清治編 2013.1
三省堂全訳基本古語辞典 第3版増補新装版 鈴木一雄編 2007.12
小学館全文全訳古語辞典 北原保雄編  2004.1
小学館 全訳古語例解辞典 第三版 北原保雄編 1997.10
大修館 古語林 林巨樹・安藤千鶴子編 1998.3
大修館全訳古語辞典 林巨樹・安藤千鶴子編 2001.11
大修館 新全訳古語辞典 林巨樹・安藤千鶴子編 2017.1
ベネッセ古語辞典 井上宗雄・中村幸弘編 1997.10
ベネッセ全訳古語辞典 改訂版 中村幸弘編 2007.11
ベネッセ全訳コンパクト古語辞典 中村幸弘編 1999.12
明治書院 最新詳解古語辞典 佐藤定義編 1991.10
文英堂 全訳全解古語辞典  山口堯二・鈴木日出男編 2004.10
東京書籍 最新全訳古語辞典 三角洋一・小町谷照彦/編集委員 2005.11


こんなにあってはとても全部を見てから選ぶという訳にはいきません。それに、辞書にはそれぞれ特色や強みがあるので、それを一つ一つ把握して、それぞれを比較して……などということをしていては、いつまで経っても買えません。

そこで、今回古語辞典を選ぶに当たっては、以下の3点に絞って検討することにしました。

(1) 例文に現代語訳がある
 実際に使うのは中学生なので、分かりやすいのが第一。現代語訳はあるに越したことはありません。
(2) 語義の概要が載っている
 複数の語義がある単語を調べる場合、いきなり細々した語釈が並べられているよりも、最初にその言葉の語感が載っていれば、「要するにどういう意味か」が押さえられるので、実際に辞書なしで古文を読むときに役立つと感じました。
(3) 語釈の意味ごとに改行されている
 理由は単純。その方が見やすいから。最近の辞書は以前に比べれば二色刷りも増えて大分見やすくなりましたが、改行がない辞書はやっぱり見にくいです。現代語の国語辞書に比べ、収録語数が大分少ないのですから、国語辞書よりも多少はビジュアルに工夫してもらいたいところです(※4)。

何のことはない、iPhoneアプリの旺文社全訳古語辞典の特長そのまんまでした。

その他の項目は今回は一切無視しました。凡例もほとんど見ていませんし、語釈の比較もしていません。付録が充実しているとか、巻頭にカラーページを載せているとか、用例を採取した古典作品の種類だとか、各辞書で様々な工夫をされていると思うのですが、全て無視。あくまで本文ページが見やすいかどうかだけで決めています(済みません)。

という訳で、新刊書店でたまたま見つけた古語辞典を、この3点(のみ)で比較した結果、2冊の古語辞典を購入しました(学校用と家庭用)。さて、その2冊の古語辞典とは……?



(※1) 電子辞書のアプリも1冊、2冊と数えるのでしょうか。それともソフトウェアのように1本、2本?

(※2) 旺文社全訳古語辞典の初版が刊行されたのは1990年。21世紀には「全訳」が学習用古語辞典の主流になっていたらしい。

(※3)Wikipedia「古語辞典」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E8%AA%9E%E8%BE%9E%E5%85%B8)の情報をもとに作成。漏れなど色々あると思いますがご容赦を。

(※4)紙の辞書の多くの欠点の一つが読みにくいこと。限られたスペースである程度の内容を詰め込むので、どうしても字が小さくなり余白も少ない。私のような中年は勿論、最近の中学生はビジュアル重視の見やすい教科書に慣れているので、字がゴチャッと詰まった辞書は読みにくいらしい。